タイトルの本、昨今大きな話題となったJALの倒産を巡り、JAL内部の雄志(客室乗務員)が立ち上がって出した本ということです。JALの赤裸々な内情がわかるという意味で貴重な本です。
実際、読み進めてとても驚いた事がいくつか。もちろん、政治家との癒着や独特の企業体質などはすでに週刊誌などで報じられ新鮮味はありませんが、それでも、意外な事実がいくつも書かれ、興味深いものでした。たとえば、JASとの統合を巡る問題。お互いの保有機種が全く異なるので、合併後、機長はJAL、JAS、それぞれの会社の機種しか操縦できない。したがって統合したスケールメリットがない!
これなど、業界では当たり前なのでしょうが、門外漢にとってはまさに開眼でした。そういう意味で、買ってみて損はない本ではあったのです。
しかし読み進めていくうちに不思議なポイントがいくつか出てきました。書かれている内容よりも「表現」です。その結果、この疑惑にいたります。
「もしかして、この本は、文春の記者が書いた物ではないのか。著者となっているJALグループ2010というのは、著者ではなく、文春の記者を指しているが、一応、メディアの倫理上、数人のJAL関係者に取材をしたということを示しているに過ぎないのではないか?本当は著者名は「編集部」とするのが正しいのでは?」
その1 「シャンペンから始まる」(75ページ)
今どきの客室乗務員は「シャンパン」とか「シャンパーニュ」と言っても「シャンペン」とはあまり言わないのでは?「シャンペン」というのはちょと古い言い方でしょう。今もワインの世界に触れていれば(なにせソムリエールの多い世界です)、あまり出てこない表現です。したがって、これは現場と関わりのない方が書かれた可能性があります。さらに言えば、フレンチコースが必ず「シャンペン」から始まると書かれていますが、実際は食前酒も様々な種類のお酒から選ぶのが現在。現場を知っていれば、これも違和感が。
その2 「戦争の時」(27ページ)
「戦争の時…一番やってはいけないことです」。本書に登場する、あるたとえ話です。え?そうなの?知らなかった。それって常識なんだ…。まるで読者みんなが知っている既知の事実という感じでのたとえ話ですが…。あまりにも専門的すぎて。なんかおかしいぞ。これは普通、客室乗務員が使うかなぁ…。むしろ歴史物とか、戦争物などが好きな人…月刊文藝春秋を愛読、もしくは直接書いている人ならあり得るけれど…。
その3 「赤旗も振らず」(112ページ)
うーん、(組合運動の)赤旗を振る…という表現が。これってそんな一般の現役客室乗務員が使う言葉かなぁ…。これもアナクロニズムを感じますね。おそらく全共闘世代か少し後の保守系の方が書かれているはず。文春カラーとは一致します。そーいえば、文春の大嫌いな朝日新聞批判も本書では展開されていますね。ますます文春のライターさんっぽいですね。
で、全般に表現がいかにも週刊誌の暴露記事調であり、こなれすぎているのも気になります。
以上のような点から、客室乗務員達が書いた原稿にしては少しおかしいなと感じる次第。客室乗務員にちょっとだけ取材して、文春の記者が書いたというのが正直なところではないでしょうか。であれば、そう記すべきでしょうし、そう記していないところに何か意図的なものを感じてしまいます。
つまり、素浪人が推理するに、本書は
・JALの組合つぶし
・機長の待遇引き下げ
この二つを目的に意図された本であり、JAL職員達がJALの再生のために身内の恥をさらしたという本ではないのではないか。未だにJALという「ブランド」の人気の高さは存在し、したがって、こういうタイトルを付ければ、それなりに売れる…。しかも、客室乗務員が書いたと言うことであれば…。そう企画者が判断したのでは…。
ということになります。ま、マスコミに体が突っ込んでいる素浪人には、実は、これは、とても現実味のある話。まだ、関係者に取材している(おそらく…意図的だけど)だけ良い方とは言えます。取材せずに思い込みだけで書いちゃう老舗出版社の某人気週刊誌なんてのも、ザラにありますから。
さぁ、以上、素浪人の推理でした。皆さんのご判断はいかがでしょう?
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